JPS Health Network は、米テキサス州タラント郡病院区(Tarrant County Hospital District)が運営する公立医療ネットワークで、中核施設の John Peter Smith Hospital(JPS Hospital)は同郡で唯一のレベルI外傷センターを持ち、地域屈指の患者数を抱える救急部門を運営するほか、郡内に25以上の地域クリニックを展開している。
2026年8月3日月曜の早朝、JPSは自社の技術環境内で不審なアクティビティを検知した。影響範囲を遮断・保全するため、JPSは管理された形でネットワークシステムを停止する「コントロールド・ネットワーク・ダウンタイム」に踏み切った。これにより電子カルテ(EHR)、患者ポータル「MyChart」、各種業務システムが利用不能となり、職員は紙ベースの縮退運用手順で診療を継続した。
停止が長期化する中、フォートワース市消防局のEMSは8月6日午後7時から、脳卒中・外傷・重症心筋梗塞(STEMI)などの重症患者の救急搬送をJPS以外の病院へ一時転送する措置をとった。JPSは8月7日、公式サイトで初めて状況を公表するとともに、テキサス州司法長官に対し、公開情報請求(Texas Public Information Act)への対応期限延長を求める「カタストロフィ通知(catastrophe notice)」を提出した。広報担当者は、この行政上の届出はあくまで情報公開請求の期限に関するものであり、患者ケアの体制変更を意味するものではないと説明した。
その後もJPSの技術チームが復旧作業を続け、8月14日に電子カルテ基幹システムが復旧し、救急搬送の転送措置は解除された。外来薬局・患者受付・検査・地域クリニックが通常運用に復帰し、延期されていた待機手術の再開・再予約も発表された。残っていた患者ポータル「MyChart」も8月16日に復旧し、JPSは通常運用への復帰を発表した。
本記録時点で、JPSは今回の事案がランサムウェアによるものかどうか、患者データへのアクセス・持ち出しの有無、攻撃者からの金銭要求の有無をいずれも公表しておらず、犯行を主張する集団も確認されていない。原因究明の調査は継続中とみられる。